あいのうた
「ボーカルアルバム発売、だって」
「らしいね」
「らしいねって、おまえの名前も書いてるぞ?」
「うん」

立夏が手にしている用紙には、『ボーカルアルバム発売』という企画書だ。
そこには立夏の名前を筆頭に、草灯と弥生さんの名前も書いてある。

どうやら草灯にも知らせは来ていたらしいが、どうも草灯の口ぶりは他人事のようである。
「立夏は歌は得意?」
「え?得意っていうか…まあ、それなりには…」
得意と自慢するほどではないが、音痴というほどはひどくはない、要するに「人並み程度」だと立夏は思い、答える。
「立夏が歌うの楽しみだな」
そう言ってにこっと笑う草灯に立夏はミミをピクピクさせる。
正直、歌なんて音楽のテストくらいでしか、人前で歌ったことはなくて、それがCDになるなんて恥ずかしい。
「あんまり人前で歌ったりしたことないし、恥ずかしいし…(ヤだ、なぁ)」
「カラオケでも行ってみる?」
「えっ?カラオケ?」
「そう。練習代わりに」
「オレ、カラオケって行ったことない」
今時、カラオケに行ったことがないなんていう方が珍しいが、立夏はあまり友達もいなかったと言っているし、それにあの青柳家の人たちがカラオケというのは確かにあり得ないかも知れない。
「じゃあ、立夏はオレと初体験しよう」
「その言い方は…なんか、ちょっと……(イヤラシイ)」
ミミを下げて視線を逸らす立夏は頬を赤くしている。
「なんで赤くなってるの?あ、なんかエッチなこと想像しちゃった?」
「ち、違ぇーよ!」
かぁっと更に真っ赤になって立夏は否定するが、赤面しているところが肯定しているようなものだ。
「そうだね、ラブホテルにもカラオケはあるし」
「えっ。そうなの?」
まともに聞き返されて草灯は内心、シマッタと思いつつフォローする。
「…っていう話らしいよ」

立夏はまだミミ付きの小学生なのだ。
ラブホテルという場所が何を意味するかは知っているようだが、実際にどんなところかは知るはずもなかった。
小学生の立夏がラブホテルがどんなところか知っていたら、問題だろう。

咄嗟に誤魔化してみたものの、少し見上げてくる視線が冷たいと感じるのは気のせいであって欲しいと草灯は思う。
「なんなら、ラブホテルも一緒に初体験しようか?」
にっこりと笑う草灯に立夏は眉を寄せてミミを伏せて警戒してしまう。
「いらねぇ」
「エンリョしないで」
「マジでいらねぇ」
「残念」
冗談とも本気ともわからない草灯の話は放っておくとして、立夏は再び自分たちのCDに話題を戻す。
「ところで、草灯ってどんな歌うたうの」
「立夏への愛の歌がいいな」
「…あいのうた……」
そんな恥ずかしいことをよく言えるなと思う。
「うん。そう」
にっこりと笑う草灯にしばらく黙っていた立夏が急に笑い出す。
何故、立夏が笑ったのか理由を聞いても教えてもらえなかった。

立夏が笑ったのはゲームのピク●ンの『愛のうた』を思い出したからだったのだが、歌詞を言うのは草灯に失礼なので、黙っておくことにした。

〜END〜

ボーカルCD、5月発売ですね〜
どんな歌歌うんでしょうね?
べつに皆川さんの歌唱力に疑問ということでなく、立夏としてのことですよ?立夏なら自分は普通だと答えるはずなので
草灯はピクミンの歌うたえばいいよ
ぴったりだと思うよ
こんなしょーもない小噺思いつくのはわたしだけですね、きっと…
加筆修正しました
2006.4.1 UP
2006.4.11 再録

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