うらはら
「立夏、オレのこと好き?」
唐突に聞いてくる草灯に立夏はフイッとそっぽを向く。
「キライ」
「ほんとに?」
重ねて聞いてくる草灯に立夏はちらりと横目で見る。
素直になれない立夏が素っ気無い態度をとったり、逆のことを言ってしまうことは今に始まったことではないが、何故か草灯は笑っている。
その様子が立夏には気にかかる。
「なんだよ?」
「それ、嘘だよね?」
「なっ…」
ビクッとしてしっぽを逆立てる立夏に草灯はにっこり笑って言う。
「今日は4月1日だしね」
そう言われてハッとした。

たしかに今日は4月1日。
エイプリル・フールだ。

「違っ…エイプリルフールは関係ないし!つーか、今気付いたし!」
真っ赤な顔をしてしっぽを膨らませて否定する立夏に、草灯の表情から笑みが消えて、あれ?と立夏は思う。
「…そうび?」
「そうだね。立夏は嘘が嫌いだもんね」
「………」
寂しそうな顔をする草灯に立夏は戸惑う。

どうしよう?
傷つけた?

本当は「キライ」という言葉を言うのは立夏は嫌いだ。
それを言わせる草灯が嫌いで、嫌いと言ってしまう自分がイヤになる。
他人を傷つけることもイヤで、立夏はしゅんとミミを下げる。
「好き?」なんて言われても素直には頷けない。
「嫌い」と言ったのは、好きかどうかを聞いてくることに対してで、草灯を嫌いなわけじゃない。

「ごめん…嘘だよ。嫌いなんて…」
そっと草灯の手首に手を置いて言うと、草灯は視線だけ向けてくる。
そして、にやりと笑った。
「じゃあ好き?」
わざとだ。
好きだと言わせるためにわざとこんな聞き方をしているのだ。

「ッ…キライ!」
「へぇ〜?」
「4月1日だから言ってんじゃねぇよっ」
「ふぅん?」
「嘘じゃないってば!!」
ムキになる立夏を抱きしめて、草灯は問う。
「で、本当はどっちなの?」
「〜〜〜〜っ」
真っ赤になって悔しそうな顔をしている立夏の痩せた腰に両腕を回して抱きながら、草灯はくすくす笑う。
(ちくしょーっ)
「草灯なんか…」
「オレなんか?ダイスキ?」
「違う!バカッ」
「愛してる?」
メガネの奥で楽しそうな目をしている草灯を立夏はミミを伏せて睨みつけ、その肩にぎゅっと抱きつく。
「だいっきらい!」

今日は4月1日だから。
スキと言えない裏返し。

〜END〜

4/1から1週間だけ拍手お礼にしてたSSです
加筆修正してます
エイプリルフールを逆手にとって好きと言わせようとする草灯
立夏ってからかい甲斐がありそうですよね
疑り深く慎重なわりに騙されちゃって人間不信にるんじゃないか…?
おそまつでした
2006.4.1 UP
2006.4.11 再録

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