アンラッキー
「「なんだそれ?」」
草灯は大きな箱を持って帰宅した。
奈津生と瑶二は草灯が持ち帰った箱に興味を持って寄って来る。
「なにこれ?」
瑶二はばしばし箱を叩き、奈津生は箱に書いてある商品名を読む。
「はろげんひーたー…ヒーター?」
途端に「なんだ」「つまんねー」と言って好奇心が強い仔猫たちは興味が削がれたようだ。

奈津生と瑶二は温度がわからない。
草灯は元もとは一人暮らし。
あまり家に居ることもないし、一人なのでそんなに立派な暖房器具は必要がなく、部屋全体を暖かくしておく方が不経済なくらいだ。
草灯は普段から体温が高くて小さな電気ストーブひとつあればよかったのだが、奈津生と瑶二はそうはいかない。
細い体をした仔猫たちは暑さも寒さもわからない。
寒くたって抗議もない代わりに、痛覚がない彼らにとっては具合が悪くなっても自覚がない。
たかが風邪でも命とりにもなりかねない。
温度もわからず痛覚もない瑶二と奈津生のためにヒーターを購入した。

「なんだってことはないだろ。おまえらのために買って来たのに」
恩を売るわけではないが、もしも2人に倒れでもされたら困るというのが実情だ。
箱から出したヒーターを組み立てコードを繋ぐと、ヒーターが明るくなる。
一度は興味を削がれた仔猫たちは見たことがないものに好奇心があるらしく、じっとオレンジ色に灯るヒーターを見ている。
「触ったりあんまり近づくなよ」
「わかってる」
「オレらだってバカじゃねーんだから、そのくらい知ってるっての」
(知識として知ってるだけのクセに)

例えばどこかに足をぶつければ『痛い』、冬は『寒い』と知識として知っているだけで、ヒーターに近づき過ぎたら『火傷する』と知識で知っているだけで実感はなく危機感が足りないはずだ。
2人は火傷をしたって痛くもないだろうが、火傷をされたら大変だ。

「何でもいいけど凍傷の次は火傷なんてするなよ」
「その言い方ムカツク」
「ま、倒れて病院にかかるよりはヒーターの方が安いモンだもんな」
草灯の言葉にムッとする瑶二に対し、奈津生は冷めたように言う。
一応、草灯なりに気を使ってくれてはいることは、わかってもいるのだ。

そして事故は起こった。

「うわー…ぱっつん」
瑶二に言われて奈津生は唇を噛み、草灯を睨む。
「オレを睨んだって仕方ないだろ」
そう言う草灯の手にはハサミが握られている。
ゲームに夢中になっていた奈津生は、ヒーターでしっぽの先の毛を焦がしてしまったのだ。
幸い大事には至らなかったが、焦げた毛先をハサミで切られて奈津生のフサフサとしたしっぽの先は、一直線にきれいに切りそろえられてしまい、不自然になってしまった。
「もっと重症な火傷でしっぽの毛が全部なくなるよりマシでしょ」
「………」
ぶーっと頬を膨らます奈津生に、瑶二は「丸刈りされたしっぽ」を想像してしまい、両手で口を抑えて笑いを必死に堪える。
「この、瑶二!笑うな!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ仔猫2人に、ヒーターを買ったのは失敗だったのかも知れないと草灯は思うのだった。

〜END〜

某作家さんの猫ちゃんがヒーターで毛を焦がしたらしいです
毛を切られてました
猫って毛が焦げても動かないもんなの!?熱かっただろうに…
しっぽ丸刈りはいただけませんね(笑)
この話の続編にあたるものが裏にあります☆
拍手:2007.1.10
再録:2007.1.26

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