最後の思い出づくり
夏休み最後の日。
立夏の部屋には毎日の天気や日記を書き込むノートやラジオ体操の出席カード、宿題のプリントや読書感想の作文用紙が床に広げられている。
真面目な立夏は夏休みの宿題は早めに終わらせていたので、夏休み最後になって慌てるということもなかった。
今は始業式に持って行くものを忘れものがないよう、確認しているのだ。
「こんなに沢山宿題あるんじゃ休んだ気がしないね」
「こんくらい普通だろ」

今通っている夜野城南小は公立だ。
以前通っていた学校は私立だったから、授業のレベルも今の学校より上で、宿題ももう少し多かった。
夏休みはほんの少し早く始まっていたから、休みが長かったせいかも知れない。

全部まとめてバッグに入れようとした立夏の手から、ひらりとラジオ体操の出席カードが床に落ちた。
それを草灯は拾う。

夏休みだし泊まり来てと誘った時に「毎朝ラジオ体操行かなきゃなんないから」とコイツのおかげで断られたのだった。
結局、ラジオ体操はお盆までだったので、立夏と旅行に行くことも出来たのだが。
草灯が手にしたカードは雨の日以外は全部にハンコが押されてあり、立夏は皆勤賞だったようだ。

「しまうから返せ」
ぴっ、と草灯の手からカードを取り返すとバッグに入れた。
明日持っていく持ち物の確認をしている立夏は心なしか楽しそうに見える。
「学校、楽しみなんだ?」
草灯が聞いてみると立夏はぴくんとミミを動かし、振り向く。
「うん、まぁ…家にずっといるよりは…。友達も毎日会えるし」
ピコピコとしっぽの先を振り答える立夏に、草灯はくすっと笑う。
いいな。オレも立夏と毎日会いたい」
「何言ってんだ。ほとんど毎日会ってんじゃねぇか」
立夏はふいっとそっぽを向いてしまうが、その頬はほんのりと染まっている。
素っ気無い返事は照れ隠しなのだろう。
(色んな顔するなぁ)

立夏が普段学校でどんなことをしているのか、どんな表情をしているのか見てみたい。
学校は唯一、草灯が入り込めない立夏の日常だから。
どんな表情も仕種も、見てみたいと草灯は思う。

「ねぇ、夏休み最後の思い出つくりしようか?」
今日は夏休み最後の1日。
それも、小学校最後の夏休みだ。
立夏の夏休み最後をしめくくる思い出は、自分でありたいと思い言ってみると、立夏は「思い出づくり」という単語に反応して、ピーンとミミを立ててしっぽを振る。
「いいよ。何するの?」
わくわくした様子の立夏の二の腕を掴んで抱き寄せると、草灯はにっこりと笑って言う。
「それは…忘れられないような、思い出…かな?」
「忘れられないような?」
期待して目を輝かせる立夏の耳に草灯は唇を寄せて囁く。
その一言に立夏はミミの毛を逆立てしっぽを最大に膨らませ、顔を真っ赤にする。
「バカ!」と怒る立夏に草灯はクスクスと冗談だと笑った。

〜END〜

コゼロサムの「最後の○○」というテーマに乗っかってみました☆
8/31に間に合えばよかったなぁ
小6の立夏たんには小学校最後の夏休みになるんですよね
最後、ちょっとだけ加筆しました
何を言ったのかは、ご想像にお任せします!(またそれか)
初出:拍手お礼
再録:2006.9.24

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