7colors
学校の帰り道、草灯と散歩がてらに歩く。
ついさっき晴れたばかりで道路もまだ濡れていて、草木のグリーンが水滴に濡れて心なしか鮮やかに、見える。

「紫陽花きれいだね」
ちょうど時期の花を目にして草灯が言う。
「うちの近所に紫陽花が沢山、きれいに咲いてるトコあるんだ」
「知ってる?紫陽花の花言葉」
草灯に聞かれて立夏は歩きながら首を横に振る。
「"冷淡"とか"移り気""浮気心"」
「なんでだろ?」
冷淡だとか移り気だと言われてしまう理由があるんだろうか?と立夏は不思議に思う。
「紫陽花は白から青く、それから赤紫に七色に変化するところから、っていう説もあるけど…。詳しい理由は知らない」
「え?土によって色が変わるんじゃないのか?」
草灯の話に立夏は驚いた顔をする。

紫陽花は土が酸性かアルカリ性かで、花の色が変わる。
しかし同じ場所に植えられた同じ株の紫陽花でも、花の色あいが違うこともあるのだ。
土壌が酸性とアルカリ性で色あいが違う、というのは間違いではないが、実際には土壌に含まれるアルミニウムが重要で、一口に紫陽花って言っても品種も沢山あり、品種によっても違う。

「そういえば、近所の紫陽花もピンクっぽいのと青いの混ざってた。七色に変わるのか。青いのはずっと最初から最後まで青いんだと思ってた」
紫陽花の花が色が変わるなんて、立夏は知らなかった。
咲いた時からじっくり見ることもなかったので、知らなかったのだと思う。
「気温や場所によっても色の変わり方も違うからね。そんなに変化がないものもあると思うよ」
「そっか…草灯って詳しいんだな」
「そうでもないよ。オレは花を専門に絵を描くから、調べたりしてるうちに覚えちゃっただけで、特別詳しいわけじゃないよ。
立夏も紫陽花みたいだよね」
草灯の言葉に立夏はぴくっと反応して、少しむっとした表情をする。
「冷淡だってこと?」
「違うよ。すぐに赤くなったりするでしょ」
くすくす笑いながら草灯は立夏の頬に触れるが、手を払われてしまう。
「そんなの、おまえのせいじゃん。移り気とか、そう思ってるのかと思った」
「うーん…それもちょっとあるかな」
草灯が言うと、立夏は睨むような視線で見上げてくる。

立夏はなかなかに罪作りなところがあると、草灯は思っている。
ユイコが立夏を好きなことなど、バレバレだけど立夏の様子ではきっと気付いていないのだろう。
本人は無意識で無自覚だから、罪作りなのだ。

「二股とか浮気とか嫌いだし、しねぇよ」
「そう。じゃあ安心かな」
にっこりと笑う草灯に立夏は、「誰もおまえのことを言ってるわけじゃない」と言おうかと思ったが、やめた。

「草灯」
立夏は草灯の服の袖をつまんで引っ張り、空を指差す。
立夏が指差す先に視線を向けると、虹が出ている。
「きれいだね」
雨上がりの空にかかる七色の虹を見る立夏は楽しそうな顔をしている。

感情は喜怒哀楽と言うが、嬉しさや喜び、怒り、哀しみ、楽しさの他にも嫉妬、不安や心配もある。
痛いくらいなら感情などいらないと草灯は思うが、立夏がいるならやっぱり感情がなかったら、きっとこんな風に嬉しいことも楽しいこともなくて、幸せな気持ちになったりはしないのだろう。

「立夏と虹が見れてよかった」
そう言って笑みを浮かべる草灯に、立夏は笑って少し照れながら「オレも」と答えた。

〜END〜

立夏は草灯に対して、ピンクになるんでしょうかね?
なんとなくまだブルーかなー?
BOAの「七色の明日」?(え?)
加筆修正しましたー
拍手に出したの2日だけです…
なんでって、もう梅雨でもないのかなーとか…(クッ…)
初出:web拍手 2006.6.28
再録:2006.7.2 UP

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