コトバのおけいこ
名前は運命。
生まれる前から決まっているその名は、戦闘機との強い絆の証。

LOVELESS、その意味は『愛無し』
なんて、イヤな名前なんだろうと思う。
「名は体を現す」というけれど、だとしたら誰の愛も得られない、誰も愛せない──そういうことなのだろうか?

たぶん、もうどこかで出会っているはずだとゼロの瑶二が言った。
「戦闘機とサクリファイスは必ずひきあうから」と──。

知り合いなんて片手で数えられる程度だ。
友達と呼べるのもユイコや弥生さん、前の学校のオサム。
あとは担任の瞳先生とか。
立夏が親しく話せる相手は片手だけで足りてしまう。
あえて、友達という存在を作らずにいた。意識的に。
そんな中で友達だと呼べる人は本当に大切で、大事な人。
もしかしたらその中に自分の戦闘機がいる?

「友達が戦闘機だったらイヤだな」
「どうして?」
夜に呼び出され、24時間営業のカフェで草灯になんとなく話す。
草灯とは年も違うし共通の話題なんてほとんどない。
こういうことは草灯がよく知っていることだし、逆に言えば草灯以外に話す相手がいない話題でもある。
立夏はテーブルの上のホットココアのカップを両手で包むようにして、草灯の方は見ないままに言う。
「どうしてって…」

草灯は自分のことを奉仕者だと言い、立夏を主人だと言う。
「オレは立夏の戦闘機だから好きに使えばいいよ。何でも命令すればいい」
サクリファイスと戦闘機は主人と奉仕者の主従関係。
奈津生たちも言っていた。
「基本的に戦闘機はサクリファイスの意向にそって行動する」

友達というのは対等な関係で、そこに上下関係はない。
大切だと思う友達が戦闘機だったとしたら、主従関係になるのだろう。
その途端に、友達ではなくなってしまう気がする。
対等ではなくなってしまう。
草灯とは友達とは違う。

「今の関係を壊したくないと思うのは、それだけ立夏が今の友達を大事にしてる証拠かな」
そう言って草灯はミルクも砂糖も入れないコーヒーが入ったカップを持ち上げ口に運ぶ。
草灯の言う通りだと思う。
ユイコや弥生さん、オサムとの今の関係が心地いいと思う。
その関係を壊したくない。
「確かにユイコちゃんあたりじゃ、どうだろうね」
「あいつはムリだろうな」
行儀悪くテーブルに肘を乗せて頬杖をついて立夏は答える。
ユイコには無理だ。
いや、ユイコだけじゃなく弥生さんにもオサムにも無理だろう。
何度か草灯と一緒に戦闘したけれど、草灯の「言葉」は他の戦闘機とは少し違う気がする。
よくわからないけれど、「わりと何でもアリ」だとか自信があるようなことも言っていたけれど、言うだけはあると思う。
草灯は「言いたくない」と言っていたが、戦闘機の学校とやらがあるようで、戦った“ブレスレス”の二人、“スリープレス”の二人もそこに通っていたようだ。
“スリープレス”の戦闘機は草灯を「優等生」だとか何とか言っていたけれど、優秀だということだろうか。
とにかく戦闘においては、本人は自信があるようだし、他人の評価も優秀だと認めているようだから。

「名前って、意味とか戦闘に関係あんの?」
「そうだね。無関係ではないよ」
煙草をくわえてライターで火をつけ、草灯は続ける。
「名前が違えば力は半減する。ダメージは普通の4倍にもなる。立夏がが本当の戦闘機を使えば戦闘機の力が減ることも、立夏が受けるダメージが増えることもないけどね。
名前そのものが攻撃として使えるということもあるけど」
そう言って草灯は煙草の煙を深く吸い、ゆっくりと吐き出す。
「4倍…って言われても、普通の規準がわかんないし…」
「普通なら逸らせる攻撃も有効になってしまうとか、ね」
ふーん…と立夏は返事する。
それきり、少し会話が途切れてしまう。

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