幸福のプレゼント
立夏の家に向かう途中、草むらの中にいる立夏を見つけた。
「立夏、何してるの?」
声を掛けてみるとピクンとミミを反応させ、しゃがんでいる立夏が振り返る。
「こっち来るな」
近づこうとすると足止めされてしまう。
立夏はしゃがんで足元で何かを探しているようだ。
「何か探してるの?手伝おうか?」
「いい」
目もくれずに立夏は素っ気無く答える。

一体何をしているのかさっぱりわからない。
近寄るなと言って何かを探しているというのは、普通ならコンタクトレンズを落としたとか。
だけど立夏はコンタクトなんてしていないはずだ。
よくわからないが、草灯はその場に座り、立夏の様子を眺める。

しばらくして立夏は立ち上がり、駆け寄って来た。
「草灯、手出して」
「なに?」
「いいから!」
なにやら少し興奮した様子で急かす立夏に草灯が手を出すと、手の平にそっと乗せられたものに草灯は目を瞠る。
「クローバー?」
立夏が渡してきたのは四つ葉のクローバーだった。
「うん。持ってるとシアワセになれるお守り」
そう言って立夏はしっぽを揺らす。
「……オレにくれるの?オレのために探してくれてたの?」
「いらなかったら捨ててもいいよ」
「まさか。捨てないよ」
そう言ってきれいに笑う草灯に立夏はほんのり頬を染め、しっぽを振る。
「ありがとう、立夏」
「わっ…」
立夏の手首を掴んで引き寄せ、抱きしめる。

幸せになれるお守りだと言って、自分のためにクローバーを探してくれた立夏の気持ちが嬉しい。


「オレ、草灯には何もしてやれないし…こんなことしか出来ないけど」
照れたように話す立夏に草灯は額に軽く口付ける。
「十分嬉しいよ。立夏がオレのためにしてくれることなら、どんなことだって嬉しい」
「そっか(よかった)」
少しでも喜んでくれたようで、立夏も嬉しくてしっぽをぱたぱたと振る。

きっと立夏は子供だから、こんなことを思いつくのだろう。
高価なものを貰うよりもずっと嬉しく感じる。
幸せになれるお守りのクローバーを探してくれたことが、幸せに感じた。

「どうしてクローバーがお守りなのか、立夏は由来を知ってる?」
聞いてみると立夏は「知らない」と首を振る。
「クローバーはクロスにも見立てられるからだって言われてる」
「珍しいから見つけたらラッキーだからかなって思ってた」
草灯の隣に座り、立夏は答える。
「三つ葉と四つ葉の種類があるから四つ葉が群生してる場所もあるんだよ」
「へぇー。でもいっぱいあるんじゃ、あんまり…」
ありがたみがない、と言う立夏に草灯は立夏がくれたクローバーをつまみながら、くすっと笑う。
「なかなか見つからないから見つけた人はラッキーっていうのはあるね」
「見つけた人がラッキーなのか?じゃああげてもイミないのか…」
「そんなことないよ。立夏がオレのために探してくれたことが嬉しいから」
しゅんとミミを下げる立夏の頭を撫でて草灯が言うと、立夏はしっぽをパタパタと振る。

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