Sweet 12years
「立夏くん、草灯さんがお迎えに来てるよ」
掃除当番で教室前の廊下を掃除していたユイコは、バケツを手に教室から出て来た立夏に窓の外を指差す。
「今日、帰りにウチ来ない?みんなで遊ぼうよ」
「ゴメン、今日はちょっと…」立夏はユイコの誘いを断る。

今日は誕生日だから草灯が迎えに来て、思い出作りをする予定がある。
朝起きて、夜中に草灯が来たのは夢だったら、と思った。
でも、登校途中に草灯からメールが入った。
放課後に迎えに行くから他に予定を入れないように、と。
だから今日は立夏一日、ずっとそわそわしていた。
誕生日の思い出作りをしてくれるという約束なので、どこに連れて行ってくれるのか考えるとわくわくしていた。

「立夏くん、今日すごく楽しそうだったけど、草灯さんと何か約束してるの?」
「うん、あのさ、オレ今日誕生日なんだ」
「本当!?わァ、お誕生日おめでとう〜!」
ユイコはミミをぴょんと立てて祝ってくれる。
「サンキュ」
長い尾を揺らす立夏にユイコもにこにこ笑う。
「早く教えてくれたらよかったのに」
「いや…祝ってくれる気持ちだけでも嬉しい」
「でも知ってたらプレゼントしたのに〜」
「こらぁ、二人とも話してないでちゃんと手を動かして!」
立夏はしっぽの先をピコピコ振りながら話していると、先生が来て掃除をサボるなと注意される。
「はぁい!ちゃんとやってまーすっ」
「オレ、水捨てて来るから」
先生に注意されて二人は慌てて掃除の続きをする。
掃除を終えて帰宅するのに立夏は草灯が待たせているので、早く学校を出ようとするとユイコに捕まる。
「待って、立夏くん!」
「ごめん、オレ急いでるから!また明日な!」
そう言って立夏は一人で急いで校門へ向かった。

「草灯っ!」
立夏が駆け寄ると草灯は笑顔を見せた。
「ごめんな、遅くなって。掃除当番だったんだ」
「構わないよ。じゃあ、行こうか」
わざわざ走って来た立夏は頬を赤くしていて、はぁはぁ息をきらせている。
そんなところも、いちいち可愛いと草灯は思ってしまう。
「うん」
「今日さ、ずっとどこ行くのかなって思って落ち着かなかった」
「楽しみにしててくれたんだ?」
楽しげにしっぽを揺らす立夏に草灯は顔を綻ばせる。
「平日じゃなかったら、もっといいところ連れて行けたんだけどね。代わりに、じゃないけどイヴは期待しててね」
「うん。でも、べつにどこだっていいよ」
上機嫌でそんなことを言ってくれる立夏に、草灯は立夏の頭を軽く撫でる。
「オレも立夏が居ればどこだっていいな」
にっこりときれいに笑う草灯に立夏は照れくさくなって俯く。が、自然としっぽが揺れていた。
「なぁ」
「なに?」
「やっぱり、草灯のウチに行きたい」
「思い出作りするんじゃないの?」
見上げてくる立夏に聞くと、立夏はそっと草灯の指を握ってくる。
「草灯のウチでも思い出作りは出来る。
ダメ?」
立夏にくすっと笑うと草灯はその手を握って答える。
「いいよ。何でも。立夏の言う通りに」

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