たからもの
クリスマスを過ぎてようやく、草灯とキオは冬休みを迎える。
大学生は自分たちで授業を選択し、時間割を作る。
学科や専攻、受ける授業によって人それぞれ、長期休暇の始まりは違う。

「やれやれ…前期は何とか、クリアかな。これでやっと休みだ」
ようやく今日で授業が終わりで、年内は最後の学校だ。
成績表を見てキオはそんなコメントをして、大きく伸びをする。
草灯がコートのポケットから携帯を出したところで、ひらりと何か紙が床に落ちる。
それを拾い上げたキオは言う。
「なにコレ?
お助け券…スーパーチケット?立夏の名前入り?」
それは先日のクリスマスに立夏から貰ったクリスマスプレゼントだ。
「なんでも券なんだって」
「へえ〜。…危険だな」
白紙委任状のそれを親友はそうコメントし、草灯は思わず笑ってしまう。
それを貰った時、草灯も同じコメントをしたのだ。


「オレのスーパーチケットあげる」
そう言って立夏は長方形のチケットを草灯に差し出した。
受け取ったスーパーチケットとやらには、「お助け券、SUPER TICKET、青柳立夏」と書かれている。
手作りのチケットだ。
「ウッソ…なにこれ?この危険なチケット。
本気?」
使用期限は無期限で1回限り、何にでも使えるのだという。
何にでも、ということは草灯が使用用途を考えるということだ。
それを草灯は「危険」で本気なのかと思う。
立夏は両手を広げて歩きながら「嬉しいか?」と草灯に聞く。
「すごく嬉しいです」
「フーン。ユイコも喜んでくれた」
くるりと振り向いた立夏はそう言って、草灯は内心「なんだ」と思う。
自分だけではないのかと少しがっかりした。
「みんなに配ってるの?」
「みんなじゃねーよ。特別な奴だけ」
特別、という立夏に草灯はふっと笑みを洩らす。
手作りのチケットをかざして言う。
「…額に入れて飾りたいな」
「そーゆーんじゃねーだろ」
マフラーに口元まで顔を埋めて言う立夏は、使わないのなら意味がない、飾るものではないと言うが、草灯にとっては十分に重要な意味があるものだ。
そんな立夏を草灯は後ろから肩に両手を回して抱きしめた。


1回限り、なんでもします、だなんて立夏はきっと何の気なしに渡したに違いない。
「そんで、何に使うのさ」
手にした立夏手製のチケットをヒラヒラと振りながら、キオは草灯に聞いてみる。
「さあ?考えてないな。使う気ないし」
せっかくの立夏からの特別なプレゼントだ。
そうそう簡単に使うのはもったいない。
「よかった。ミミ落とす権利とか要求する気かと思った」
大袈裟に胸を撫で下ろしてキオが言う。
「まさか。そんなわけないでしょ。
遊びなんだって」
それは草灯ももしそういう要求をしたらどうするつもりなのかと思ったが、立夏の好意を利用するつもりはない。
「ふーん?あれか、肩たたき券とかそーゆー感覚?」
「かわいいよね」
くすっと笑って親友の手から大切なチケットを取り上げると、草灯はそれをバッグに入れる。

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