xxx 〜sweet kisses〜
9月28日――。
その日もいつもと同じ、特に変わったこともなく終わる予定だった。
夜の来訪者が来るまでは…。


夕食の後に風呂に入り、就寝までの時間を立夏は部屋で過ごしていた。
宿題を済ませると、明日の学校の時間割りを見て教科書やノート、その他に必要なものを忘れ物がないように用意してバッグに入れる。
毎日、当たり前のように繰り返す日課だ。
しっかり者でだらしがないことが嫌いだった兄の影響か、立夏の生真面目な性格からか、立夏はこういったことは事前にきちんと準備しておかなければ気が済まない。
それからの時間は、写真の整理をしたりパソコンで調べものをしたり、ユイコや弥生さん、時には前の学校の友達のオサムとメールをしたり、読書をしたりと日によって違う。

ベッドに座って携帯を開くとユイコからメールが来ていた。
宿題でどうしてもわからないところがあるという内容だったが、ユイコのメールは絵文字がいっぱいで困っているように見えない。だけど、ユイコらしいと思う。
返事を打っているところで、カラカラ…と静かに窓が開く音に立夏は振り返る。
「こんばんは」
「忙しいんじゃなかったのか?」
このところ、草灯は忙しいらしくて学校に迎えにも、夜に部屋にもあまり来なくなっていた。
パジャマ姿で携帯でメールを打っていた立夏は、送信を終えたらしくパチンと携帯を閉じて、ベッドの枕元に置く。
「今日はどうしても立夏に会いたくて」
ジャケットを脱いで立夏の隣に座って草灯は言うと、立夏は頬を少し染めた。
「何か用があるのか?」
「うん、そう。立夏じゃないと、ダメなこと。
今日はね、オレの誕生日なんだ」
「えっ、早く言えよ、そういうのは。何にも用意してないじゃん」
今日が誕生日だなんて知らなかったから、プレゼントを何も用意していなくて立夏は困る。
そんな立夏に草灯はくすっと笑う。
「いいよ」
そう言って草灯はポケットに手を入れて何か取り出すと、立夏へ差し出す。
草灯の手からひらりと一筋の赤いリボンが垂れた。
「……?リボン?」
立夏は不思議そうにそれを眺める。
草灯はそのリボンを立夏の首に巻いて結ぶ。
「なんだよ?これ?」
「いいから」
「………」
自分の首に結ばれたリボンを見て立夏はしばらく無言だったが、はっとする。
「えっ?ちょっと、待て。これって…」
「そう。立夏がプレゼント」
「はァ!?」
くすくすと笑う草灯に立夏は見る見るうちに顔を赤くしてしっぽを膨らませていく。
「かわいい。似合うよ」
リボンの端をつまんで言う草灯に立夏はそれを解こうとする。
「まだ解いちゃダメだよ」

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