Jelousy Dog
サクリファイスは主人。
戦闘機は奉仕者。
戦闘機は主人であるサクリファイスの命令に従い、奉仕する。

そんなことは、よくわかっていること、のはずだった。


(なんでそんなことしなきゃなんないんだか)
うんざりした気分で二世は息をつく。

与えられた任務は、清明の弟である青柳立夏の監視。

優秀な戦闘機であるという自信がある二世にとって、現在はサクリファイスである清明は表に出られない以上、その能力を使うことは殆どない。

二世に気付いた目の前の主人は笑みを浮かべたまま言う。
「不満、て顔だね」
気分を隠さない二世は目を伏せて面倒そうに答える。
「どうしても必要な任務なら、やりますよ。
でも観察する理由がよくわかんないなァと思って」
「必要性や理由は僕が考えることで、二世は言うとおりに動けばいい」
開いている本に視線を落としたまま話す清明に二世は息をつく。

それはそのとおりだ。
戦闘機にとってサクリファイスは主人。
主人の命令は絶対のもの。
戦う理由だとか命令の必然性を考えるのは自分の役割りではない。


しかし、どうしても考えてしまう。
そんなに立夏のことが気になるのなら、連れて出ればよかったのではないだろうか?


「ひとつ思うんですけど、言っても?」
二世が片手を軽く挙げて発言を示す。
本から視線を上げる清明に、聞く耳を傾けてくれていると判断して二世が言う。
「わざわざ死んだことにして偽装死まで演出するのも面倒だと思うけど、それは敵の目を欺くために必要だったのはわかるんですけどね。
でも気になるのなら立夏も連れて来たらよかったんじゃないですか?我妻草灯なんかに預けたりしないで」
二世の言葉に清明は本にブックマーカーを挟み、ぱたんと静かに閉じる。
「そうだね。出来ることなら、他人に任せたりせずにそうしたいとは考えたよ。
だけど僕は狙われている。僕といることは立夏を危険に晒すということだ」
「それはわかるんですけどね」
二世が言うと清明はちらりと視線を向けてくる。

それ以上の理由が必要か?と問われているかのようだ。
二世が聞きたいのはそこではない。

つまり、清明にとって大切な存在である立夏を守る役目を、我妻草灯に任せていることも、二世には不満だ。
そんなに我妻草灯を信頼しているのか?と思うと腹がたつ。


『BELOVED』――その名はとても有名だ。

だけどそれは過去のこと。
サクリファイスとして優秀な清明といた頃、我妻草灯が強いのだということは有名だった。
だけどそれは過去のこと。

二世には自分が戦闘機として高い能力を持っているという誇りを持っている。
我妻草灯にも負けない、勝つ自信がある。
二世が不満なのは現在の『BELOVED』の戦闘機は自分であり、高い戦闘能力を発揮する機会がないばかりか、『BELOVED』が強いというのは自分ではなく、我妻草灯といた頃の名声であるということだ。
そして清明は大事にしている弟を、かつての戦闘機に預けている。
戦闘機としての我妻草灯の能力を高く評価しているからこそ、なのだろう。
そうでなければ、大切な存在を他人に預けたりはしないに違いない。

どれをとっても二世にはおもしろくない話だ。

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