2p
「ああ、でも…なんとなーく草ちゃんがかまいたがるのもわかる気がするなぁ。わかりたくなかったけど」
しみじみとかわいいわ、などと言って無遠慮にミミを撫でられる。
何故かそんなに嫌な気分にはならなかった。

「草ちゃんから話聞いてるからさ、いっぺん会ってみたいと思ってたんだよな」
「そうなの?」
「話には聞いてもやっぱ本人に会わないと、どんな人間かわかんないじゃん。まあ、ちょっと会ったくらいじゃやっぱわかんないけどな」
キオの言葉を聞いて立夏はジュースのストローを噛んだ。

草灯とはそんなに長いつきあいではない。
それでもそれなりに親しくはなっている。
ちょっと会ったくらいでは、相手のことはわからない。
でも、一緒にいても立夏は草灯のことはあまり知らない。
草灯がいくら誰かに自分のことを話していようと、立夏は話していたことすら知らなかった。
立夏の周りにいる人間のことを草灯は全部ではないが、知っている。
なのに自分は草灯のことはほとんど何も知らないようなものだ。
この差は何なんだろう?と思う。

「あー、もう時間ないや。じゃ、月曜な。
そうだ、立夏、これあげる」
キオは持っていたバッグからチュッパを出す。
「え、いいよ…べつに」
「チュッパ嫌い?それとも違うのがいい?プリンとコーラとー…」
言いながらキオはバッグの中から違う味のチュッパを出してテーブルに並べる。
(うわ…なんでこんなに持ってんの)
「もうわかんないや。これ全部あげる」
キオはごっそりチュッパを立夏の前に置くと、バイバイと言いながら立夏の頭をぐりぐり撫でて去って行った。

「………」
「キオはそれ、好きでよく舐めてるんだ。沢山持ってる」
「ふーん…。草灯って、友達いたんだな」
なにげなく立夏が言うと草灯は俯いて肩を揺らして笑う。
「なんで笑ってんの(なんかヘンなこと言ったか?)」
「それはヒドイな。友達いないヤツだと思ってたんだ?」
くすくす笑いながら言う草灯に、立夏は小さく「あ」と声をあげた。
「友達って一人もいない方が逆におかしいでしょ」
思ったことをそのまま言っただけなのだが、それもそうだと思う。
「だってオレ、おまえのことなんにも知らねぇもん」
バツが悪そうに肩をすくめてミミを伏せる立夏に草灯は笑う。
「立夏が知りたいなら教えるよ。なんでも」
何でもとか秘密はないとか言いながら、隠し事をするくせにと立夏は草灯を少し睨む。
「まあ、友達って呼べるのはキオくらいなものなんだけどね」

正直言って、立夏は少しキオを羨ましく思った。
理由はきっと、草灯の言う友達という関係には自分はなれないからだ。
知らないことはこれから知っていけばいい。
だけど、草灯が戦闘機であることをやめられない以上、自分もそうなのだろう。
どうしても自分たちの関係には、戦闘機とサクリファイスという主従の関係は切っても切り離せない。
それだけの関係でいたくないと立夏は思う。
キオのように純粋に友達という関係にはなれない。
そのことが少し羨ましく思う。
今すぐに大人になることが出来ないように、羨んでも仕方のないことだけれど。
それでも、自分たちなりのいい関係を作れないことはないと思う。

〜END〜

ただ単に立夏とキオを会わせてみたかっただけなんですけど
以前、キオと草灯で「友達」というお題小説を書いた時に、キオが立夏ばっかりな草灯に拗ねる、という話でした
立夏は立夏で草灯の日常に一番近いキオを羨ましいはずで、でも羨んでもしょうがないことだと思うんですよね
なんだ…結局、草灯が罪つくりなだけじゃん(笑)
2005.3.6 UP

≪Back
≪カップリングmenu
小説トップ
HOME
無料ホームページ掲示板