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友達が誰かに奴隷のように扱われていたら、立夏もイヤだと思う。
誰かの言いなりになるヤツは嫌いだし、そんな風に扱う人間も嫌いだ。
(草灯は戦闘機だから…)
もし、清明が草灯をそんな風にしていたとしても、清明はサクリファイスだから…。
草灯は立夏に支配を望み、命令を要求する。
それは戦闘機だから。
立夏がサクリファイスだからだと言う。

清明も草灯を支配し、命令していた?
だけど清明がするだろうか?

草灯は清明に命令をされて立夏の戦闘機になった。
していたのかも知れない…。
家の外のことや、一緒にいない時のことはわからない。
現に草灯のような存在がいたことも、草灯と出会うまで立夏は知らなかった。
清明の知らない部分はあって当然だけど、やはり立夏には信じられないし、動揺してしまう。
立夏にとっての清明は優しくて、とても他人を傷つけたりするようには思えなくて……。

「信じられない、か?知らないだけなんじゃないの?
さっき言ったよな、みんなヤなヤツだって言うって。みんながヤなヤツだって言う部分を立夏が知らないだけじゃないの?」
立夏の抱いている不安や疑問をキオは言い当て、立夏は一瞬、表情を強張らせた。
だけど──。
「…あんたが本当のこと言ってるって信用はオレは出来ない。初めて会った人の言うこと信じられない」
キオに言い当てられても、立夏は初対面のキオの話も信じることは出来ないと思う。
それなら自分が知っている清明の方を信じる。

だがそれは、自分が清明を信じたいがための自己正当化なのではないか?という自分に問い掛ける声がする──。

「なるほどね。まぁ一理あるな。
なら、確かめりゃいい。オレは何度も手当てしてやったりしたから知ってる。聞いてみりゃいいよ。草ちゃんの体見てみたらわかる」
「………」
草灯の体を見たらわかる、と言われて立夏の動揺は激しくなるが、それをひた隠す。

草灯の首には名前の他に、傷がある。
それだけでも「普通」じゃない…。
今まで出会って戦った他の戦闘機やサクリファイスに、名前の他に傷なんてなかった。
それに以前、立夏は草灯の首の傷を手当てした時に、草灯の裸を一度見たことがある。
古い傷跡がいくつもあったことを覚えている。
あれも全部、清明がやった……?
覚えがあるだけに立夏はキオの話に動揺してしまう。

床に座る立夏の傍にあぐらをかいて座るキオは膝に肘を乗せ、頬杖をつく恰好で立夏を見る。
「年下に奴隷みたいに扱われて、そいつがいなくなってせいせいしたと思えば、今度はその弟。
おまえが清明みたいにするなら、と思ってたけど…ちょっと違うみたいだな」
「どういう意味…?」
「立夏に関わるようになってから、草ちゃんは人間らしくなってきた。清明は都合もお構いなしに呼び出したり束縛したり、そりゃもうバイオレンスだったけど。
立夏には自分から捕まりに行ってるみたいだし。怪我も減ったしな」
「………」
立夏、と呼び捨てにされていることに立夏は気付きながらも、それについてどうこう言う気にならない。

人間らしい、というキオの言葉が立夏にも少し納得出来た。
草灯は最初から、なんだか不思議で同じ人間とは思えなかった。
小学生の自分に命令しろだとか、体罰を与えてとか、普通じゃない。
戦闘機としての考え方が徹底していて、立夏は苦労している。

草灯は人間、一個人である前に「戦闘機」だから…。

キオの言うとおり、自分と会って草灯が人間らしくなったというなら、嬉しい気もするけれど。

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