Campus Life
「学祭?」
「そう。大学のお祭り」
草灯いわく、草灯が通っている大学で芸術祭、他の学校で言うところの学園祭があるのだそうだ。
学生の作品の展示や、体験制作を出来る講座などが開かれ、他にも学生達による喫茶店やフリーマーケットなどもあるのだという。
それを聞いて立夏はどんな感じなんだろう?と興味を持つ。
「来る?」
「行く!」
誘ってみると立夏はミミをピーンと立ててしっぽを振る。

草灯に貰った住所と地図のメモを片手に、立夏は目的地へと向かう。
大学の入り口に着いたら電話をすれば迎えに来ると言うので、立夏は入り口が見えて首から下げた携帯電話を開く。
が、入り口に見知った背の高い人物を見つけて立夏は小走りに駆け寄る。
「草灯!」
草灯も立夏には気付いていたようで、笑顔で迎えてくれた。
「迷わず来れた?」
「うん」
「じゃあ行こうか」
草灯に肩を抱かれて立夏は大学の中に足を踏み入れる。

着ぐるみのうさぎやクマがビラを配り、黒いドレスにフリルの付いた白いエプロンの、メイド姿の数人の女の人までいる。
「大学って広いんだなー」
大小さまざまな建物があって、立夏は興味深そうにきょろきょろとあたりを見回す。
草灯は余所見している立夏の手を握る。
「手、離せよ」
「余所見してるとはぐれるからね」
さすがに草灯と似たような年齢の人たちが多くて、自分のような子供が殆どいないこともあり、立夏は恥ずかしく思う。
「恥ずかしいの?」
「当たり前だろっ。おまえ、自分の学校なのに恥ずかしくないのかよ」
「べつに?どうして恥ずかしいかな」
「どうしてって……」
わかっていたことだけど草灯は手をつないだりしたがる。
そればかりか、肩を抱いてきたりやたら触りたがる。
普段通ってる学校で顔見知りも多い場所で、恥ずかしくないという方がおかしいと立夏は思う。
少しは羞恥心というものを持って欲しい。
学祭のパンフレットを見ただけでも広くて色々な催し物があるようだ。
催し物の中にはCGアニメの上映会や、人形劇なんていうものもある。
展示されている作品を見て回る。
彫刻やカラフルなポスターのような絵、一口に絵と言っても描かれているものは様々で、人物や動物、植物、風景、抽象的なものまで様々なモチーフを元に色々な作品がある。

それから草灯が描いたという絵を見る。
草灯の絵は草灯の自宅に置いてあるのを見たことはあるが、自宅に置いてあった絵と同じく、きれいなアゲハ蝶が描かれていた。
作品の展示を見てから、食堂で軽く食事をする。
立夏にとっては草灯の絵を見ることも楽しみだったが、どんな催し物よりも、草灯が日頃通っている学校が見れるということに興味がある。

「なぁ、草灯の教室どこ?」
「ちょっと遠いよ。向こうの一番端だけど。行く?」
「うん、見たい」
しっぽを振りながら機嫌よく見上げて来る立夏を連れて、草灯は日本画学科の教室がある建物へ向かう。

いつも草灯が通っている場所を見てみたい。
歩きながら立夏は大学はどういうところか草灯から話を聞く。
草灯は絵画学科の日本画専攻で、絵画学科は他に油絵と版画があり、映像や演劇など、「芸術」「創作」に関する様々な学科がある。
草灯はどういう勉強をしているのかというと、植物や静物、人物や動物、風景のデッサンや、絵の具や和紙などの材料、技術や技法などの授業や、研修の合宿などもあるのだという。
「絵描いてばっかりじゃないんだ?」
「そう。材料になる絵の具とか和紙を作る授業とかもあるよ。描くだけの授業ばかりでもないんだ」
歩きながら話すうちに目的の場所に着く。

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